工場のスレート屋根を改修しようと調べる中で、「うちの屋根はアスベストを含んでいるのではないか」と不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。アスベスト含有スレートの改修は、通常の改修と異なり、事前の調査や法規制への対応が必要になる場合があります。
本記事では、アスベスト含有スレートの基礎知識と関連する法規制の概要、撤去を伴う改修のリスク、撤去せずに改修できる工法までを解説します。
アスベストを含むスレート屋根材は、1930年代から製造されてきました。日本では1970年代以降、段階的に規制が強化され、2004年(平成16年)には住宅屋根用化粧スレートを含む建材など、石綿を1重量%を超えて含有する製品の製造が禁止されています。さらに2006年(平成18年)には、含有率0.1重量%を超えるすべての石綿含有製品について、製造・輸入・譲渡・提供・使用が原則禁止となりました。一部製品には猶予措置がありましたが、2012年(平成24年)の猶予終了により、現在では石綿を含む建材の製造・使用は行われていません。
そのため、2004年以前に建設された工場は、スレート屋根にアスベストが含まれている可能性があると考えられます。ただし、実際の含有有無は建材の製品名や製造時期によって異なるため、断定はできません。設計図書や竣工図に建材名・メーカー名が記載されている場合は、国土交通省・経済産業省が公開する「石綿含有建材データベース」で照合できるほか、最終的には有資格者による事前調査で確認する必要があります。
アスベスト含有建材を対象とする工事には、主に厚生労働省が所管する石綿障害予防規則と、環境省が所管する大気汚染防止法が関わります。建築物等の解体・改修・補修工事を行う際は、事前に石綿含有の有無を調査することが義務づけられており、2023年10月からは、この事前調査を厚生労働大臣が定める講習を修了した有資格者が行うことも義務化されています。
また、2022年4月からは、一定の要件に該当する工事について、事前調査の結果を都道府県等および労働基準監督署へ報告することも義務づけられました。報告は原則として「石綿事前調査結果報告システム」を通じて行う仕組みです。工場の屋根改修であっても、これらの手続きの対象となるかどうかは工事の規模や内容によって異なるため、施工業者を通じて事前に確認しておくことが大切です。
スレート屋根材は、吹き付け石綿などと比べると石綿の飛散性が低い「成形板」に分類されますが、切断や破砕を伴う作業では石綿粉じんが発生するおそれがあります。そのため大気汚染防止法では、こうした成形板の除去作業についても、切断せずに手ばらしで取り外す、作業箇所を散水して湿潤化するなど、石綿の飛散を防ぐための作業基準に沿って施工することが求められています。2021年の法改正では、この規制の対象がスレートなどの成形板等にも拡大されており、撤去工事の際は施工業者がこれらの基準を遵守しているか確認が必要です。
撤去したスレート屋根材は、石綿を含む産業廃棄物として、廃棄物処理法に基づく処理基準に従って扱う必要があります。スレートなどの成形板は非飛散性の「石綿含有産業廃棄物」に区分され、破砕せずに他の廃棄物と分別した状態で保管・収集運搬し、管理型最終処分場などで処分することが求められます。こうした分別や運搬・処分の手間により、通常の解体廃材に比べて処理費用が高くなる傾向がある点は、撤去を検討するうえで念頭に置いておく必要があります。なお、具体的な処理費用は建材の量や地域、処分業者によって異なるため、複数の業者から見積もりを取って確認することをおすすめします。
カバー工法は、既存のスレート屋根を撤去せず、その上から新しい金属屋根を重ねて施工する改修方法です。解体工程がないため、アスベストの飛散リスクを抑えながら改修できる点が特徴です。ただし、新しい屋根材を固定するための母屋・下地の強度が保たれていることが前提となるため、老朽化の進行具合によっては適用できないケースもあります。
屋根表面に塗料を塗布し、防水性や遮熱性を回復させる工法です。既存のスレートを撤去せずに施工でき、初期費用を抑えやすく、工期が短い点が特徴です。遮熱塗料を使用すれば、工場内の省エネにもつながります。
一方で、塗装はあくまで屋根表面の保護にとどまるため、雨漏りや錆がすでに進行している場合には効果が見込めません。また、耐用年数が短く、定期的な再塗装が必要になります。加えて塗装前の下地処理として高圧洗浄を行うのが一般的なため、アスベストを含むスレートに施工する場合は、洗浄方法や飛散防止対策について事前に業者へ確認することが欠かせません。
一般的な改修工事では、下地処理として既存スレートの高圧洗浄を行う工程が含まれることがあり、この洗浄によってアスベストの飛散が懸念されるケースがあります。こうした懸念に対して、高圧洗浄を行わず、既存スレートを覆う形で封じ込める考え方を取れるスプレーカバー工法(SOSEI工法など)という手段もあります。液状の樹脂を吹き付けて防水層を形成する工法で、既存屋根を撤去しない点はカバー工法と共通しますが、金属屋根を重ねるのではなく樹脂で覆う点が異なります。どちらの工法が適しているかは、下地の劣化状況や屋根の形状によって変わるため、専門業者による現地調査を踏まえて判断することが必要です。
工場のスレート屋根がアスベストを含んでいるかどうかは、製造時期だけで断定できるものではなく、有資格者による事前調査での確認が欠かせません。含有が判明した場合、撤去を伴う改修には飛散防止措置や廃棄物処理などの負担が生じる一方、塗り替え工法やカバー工法、スプレーカバー工法(SOSEI工法など)のように、撤去せずに改修できる選択肢もあります。
工場のスレート屋根の強度に不安がある方は、まずは専門的な診断を受けることをおすすめします。そのうえで、適した業者に依頼しましょう。



※1 参照元:トヨコー公式HP(https://www.toyokoh.com/sosei/)2025年12月時点の公式サイトの記載より
※2、3 参照元:テイガク公式HP(https://yanekabeya.com/esunuki/)
※4 2025年11月18日にGoogle検索「工場 屋根改修」と検索した際に表示された上位25社の業者のうち、工事保証期間が最長。葺き替えと金属製の棟下地を組み合わせた特定の工事を行うことが条件となります。
※5 参照元:綿半ソリューションズ公式HP(https://wkcover.jp/)